【静かなる時差ボケと、笑い声の魔法】
8月7日、金曜日の朝。窓の外は晴れ渡り、最高気温は容赦なく35度を叩き出すと予想されている酷暑の日である。今朝の体重測定で4.4Kgを記録した我が家の老犬との朝は、まるで難解な暗号を解読させられる探偵のような気分だ。歯磨きと目のケア自体は何事も無く済んだものの、右目のイボ(腫瘍だろうか)がまた少し大きくなっているのが目につく。鼻のただれは今日は見当たらないが、今朝はやけに血交じりの鼻水の量が多い。さらには右の犬歯から僅かな出血があり、そのせいか左の犬歯の歯磨きを頑なに嫌がる始末だ。
一通りの朝のルーティーンが終わると、彼は早々に夢の世界へと舞い戻り、また寝てしまった。いったい朝ごはんは何時に食べるつもりなのだろうか。我が家だけいつもと違う時間が進んでいるような錯覚に陥りながら待っていると、午前10時過ぎにようやく朝食が終了した。その結果、昼食に至っては午後2時頃までズレ込むことになった。「食べたら寝る」という行動自体はいつも通りなのだが、どうも全体の流れがちょっと違うのだ。「これは老いによる体内時計の反逆ではないか」と深刻な顔で分析を始める私に対し、妻は呆れたようにお茶をすすり、「ただのおばあちゃんがマイペースに二度寝を満喫してるだけでしょ」と一刀両断した。
自分の大げさな妄想を恥じつつ「まあそれもそうか」と自己完結しかけたその時である。テレビを見ていて我々夫婦がワハハと笑った瞬間、熟睡していたはずの彼女がパッチリと起きたではないか。楽しそうな声が聞こえると、まるでバネ仕掛けのように体が動くらしい。なんだ、やはりしっかりと聞こえているのだ。
起きた彼女はトコトコとトイレに行き、用を済ませると、何事もなかったかのようにまた寝た。相変わらずかわり映えのしないいつもの日常だけれど、私たちは確かに同じ時間を共有し、共に生きている。うだるような暑さに包まれた地方都市の風景の中、この静かで少し不器用な日常が、明日もただ平和に続いてくれればそれで十分だ。






.jpeg)